公開: 2022年10月5日
更新: 2022年10月5日
人類の進化の歴史の過程で、もっとも新しく登場した種の仲間をホモサピエンス(現生人類)と呼びます。ホモサピエンスは、今から20万年から30万年前に、アフリカで、旧人と呼ばれる種類の人々から進化して生まれました。旧人には、ネアンデルタール人が含まれます。その意味で、ネアンデルタール人は、ホモサピエンスに近い人類の種類です。
誕生から約20万年の間に、ホモサピエンスは、アフリカ大陸から世界中に広がりました。ネアンデルタール人も、ホモサピエンスと同じように、ヨーロッパ大陸だけでなく、極寒のシベリアにまで、マンモスなどの大型動物を追って、その生息域を拡大しました。ホモサピエンスよりもがっしりとした骨格のネアンデルタール人は、寒さにも強く、力も強かったため、マンモス狩りは得意だったようです。
しかし、今から約3万年前に、最後のネアンデルタール人が、現在のスペインの南西の地で死に絶えたため、ネアンデルタール人は、種として絶滅したようです。しかし、2010年頃の遺伝子分析技術の進歩によって、ドイツのマックス・プランク研究所の成果によって、ネアンデルタール人の化石から核DNAを取り出して分析することができるようになり、現代人の核DNAとの比較ができるようになりました。その結果、現代のヨーロッパ人が持つ核DNAの中に、ネアンデルタール人の遺伝子が引き継がれていることが分かりました。
その遺伝子分析によると、肌の色、目の色、髪の毛の色に関係する遺伝には、ヨーロッパ人にその影響が残っていることが分かっています。つまり、白い肌、青い目、金髪は、ネアンデルタール人が持っていた遺伝だったのです。また、最近では、新型コロナウィルスにかかり易い体質も、ネアンデルタール人の遺伝であることが分かっています。さらに、人類の一部に、新型コロナウィルスにかかっても、比較的軽症ですむ人々がいることが知られていますが、それも、一部のネアンデルタール人が持っていた遺伝が関係していることが分かってきました。
斎藤成也著、「日本人の源流」、河出書房新社(2017)